『黄帝内経』には、一貫して天人合一の考え方が述べられています。天と地の間に人間や動物がいて生活しているのだから、自然に調和するには、陰陽に則し、季節の働きに合わせることが大切であると説いています。

春夏や日中は陽に属し、陽気が多く、秋冬や夜中は陰に属し、陰気が多い。この自然の気の働きを人体や動物たちも受けるから、体にも陰陽の働きがある。自然界に陰陽の時期があるように、体の陰陽の気もバランスを保っているが、その割合は季節に合わせ、多くなったり少なくなったりする。このバランスが崩れたときに病気になると、あります。

体の陰気は生命エネルギーである精気を貯え、陽気が発散しすぎないようにしますが、陽気は体の外側をめぐり、外邪に対し身を守っています。陰と陽は対立しながらお互いに依存し、一方が他方と無関係に存在することはなく、一方のみでは生命活動は維持できません。
一般的に、物質は陰に、機能は陽に属します。
素問、四気調神大論には、四季に合わせた養生法として以下のように書かれています。

体の上部(上焦、横隔膜より上)には陽気が多く、心が中心で、下部(下焦、臍より下)では陰気が多く、腎が中心であり、上下の陰陽は交流しています。正常では陽気は下に降り、腰や足を温かくし、生殖器の働きを活発にし、陰気は下から昇り頭をすっきりさせます。 ちなみに、陰陽は常にバランスをとっています(陰平陽秘)が、体の中では、天秤のように一方が多いと他方が常に少ないというわけではなく、片方が多くなっても他方は正常、片方が少なくなっても他方は正常、両方多い、両方少ないという状態が起こります。

五臓には、それぞれ肝陰・肝陽、心陰・心陽、脾陰・脾陽、肺陰・肺陽、腎陰・腎陽とありますが、その中でも腎陰はすべての臓腑や組織を滋養し潤し(腎は水)、腎陽はすべての臓腑や組織を働かせたり温めたりするエネルギーで、腎の精気は生命活動の本(もと)です。腎陽は腎陰の水を蒸騰気化(温煦)させるエネルギーで、そのため腎陽虚になると体が冷え、むくみを生じさせます。
腎陰と腎陽は、どちらも腎中の精気を物質的基盤としているので、陽虚がひどくなると陰も一緒に虚し陰陽両虚に、腎陰虚が程度を超えると腎陽にも及び、やはり陰陽両虚になります。よって、腎陰虚、腎陽虚ともに腎精不足を伴うことが多いのです。
腎精は、両親から受け継いだ先天の精と脾胃に入る水穀の精微(後天の精)が蓄えられたものです。

参考) 『黄帝内経・素問およびハンドブック』『基礎中医学理論』